書籍・雑誌

スティーヴン・グリーンブラット著『1417年,その一冊がすべてを変えた』

 ルクレチウスが『物の本質について』を書いたのは,紀元前のことらしい。そのルクレチウスは,さらに前の時代に生きたエピクロスから影響を受けたという。
 紀元前の時代から生きていた「原子論」の考え方,それが,キリスト教の時代に一度は葬り去られたのだ。
 本書のタイトルにある1417年というのは,まだまだキリスト教全盛期である。そんなときに,ある人文学者が修道院の図書室から『物の本質について』を発見し筆写する…。その人文学者の名前はポッジョ。この物語はポッジョを主人公として進められるが,時代が時代なだけになかなかスリリングな展開を見せるのだ。
 私は,ルクレチウスやエピクロスに興味があって本書を手に取ったが,そうじゃないひとたちにも,十分楽しめる内容になっている。
 中世のいろいろな哲学者の名前(教科書で習った人たち)も,キリスト教やルクレチウスと絡み合いながら出てくる。
 最終章にはトマス・ジェファーソンまで登場するという壮大なノンフィクションである。

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ゲーテ著『きつねのライネケ』

 むかーしむかしの石川県の子どもたちの「読書感想文」をまとめた本を読んでいたら,この本に関する感想文が巻頭を飾っていました。その6年生の感想文を読んでいると…原作を読みたくなりました。

 小学校高学年向け…と言う風に書かれていますが,もし,あなたが初めて読むのなら,大人になってから読んでも,価値のある本です。
 ライオンの王様に,きつねのライネケに意地悪されたと,いろいろな動物たちが出てきて,王様に訴えます。
 で,王様は,それが本当かどうか確認するために,ライネケを連れてこようとするのですが,派遣されたクマが返り討ちにあいます。次は…。
 というように,このきつねのライネケはとても,悪い奴という感じで描かれています。
 そして,物語の結末は…
 これを言ってしまうと,この物語を読む価値が半減しますので,ネタバレはしません。

 こういう話をあのゲーテがまとめたというのも驚きです。
 中世のヨーロッパには,きつねのライネケのような話が,語り継がれてきたようです。

 そんなきつねや動物たちの話を集めた本も,出ているようです。
 

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堀江貴文著『すべての教育は「洗脳」である』

 本書のタイトルは,なんとも刺激的な題名である。
 教師である私にとっては,それこそ,死活問題になる話である。もし,私のやってきたことが「洗脳」ならば,オウム真理教がやってきたことと,なにも変わらないことになる。
 それは本当か?
 言いすぎではないか,ホリエモン!
 が,しかし,私は「今の教育はそのままでいいのだ。ホリエモンよ,お前の言っていることはおかしいぞ…」と反論することは,まったくできない。ホリエモンの意見に同意してしまう自分がいる。
 ホリエモンの言うとおり,今の日本の教育は,明治から全く変わっていない。あの悲惨な戦争を経験し,日本を支配していた教育勅語は廃止された…といっても,日本人の本筋の所は全く変わっていない。
 子どもは未熟だから,社会に出たときに困らないように「適応させる」必要がある。だから,そのために「今は我慢させて」でも,道徳をはじめとする学校教育の「枠にはめる」のだ。
 そして,はみ出した子には,学校での居場所は保障されない。ましてや,学校を拒否して生きることは,相当のエネルギーが必要になる。かくして,子どもたちは,まるで金太郎飴のように,均一化されて学校を出て行くのだ。

 こんな社会にだれがした…。子どもたちこそ,次世代を担う新しい社会の作り手ではないか…そうホリエモンは言いたいのだろう。

 が,しかし,子どもたちは,成長して,新しい社会を作っていくだけではなく,ある程度は既存の社会に合わせていく力も必要であることは論を待たないであろう。たったの1人で社会を作ることは出来ない。ある程度のその社会を支配する道徳や学力(一般的なもの)もないと,友と一緒に社会を変える力さえも発揮できないかも知れない。

 今の教育は,余りにも均一すぎるし,子どもの興味関心を無視しすぎているという指摘には,大いに賛成するが,だからといって,公教育をすぐに廃止するわけには行くまい。
 いや,公教育があってこそ,人権感覚も身について来たのだという過去の歴史もある。「ヒトは教育によって人になる」というのも,あながち的外れではないはずだ。

 教育界に,もっと自由があれば,教師ももっとゆったりとできて,いろんなタイプの子どもたちともゆったりとつきあえるはず。

 ま,学力テストで1位だ2位だといっているようでは,今の学校には,まったく期待できないね。
 
 いろいろと教育について考えるキッカケとなる本でした。

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板倉聖宣他著『理科オンチ教師が輝く科学の授業』

 授業記録って,やっぱり,いいもんですね。

 犬塚清和さんは,「編者まえがき」で次のように述べています。

「子どもたちには学習意欲がない」「だから授業がうまくいかない」という声が教育現場では聞こえてきます。でも,教師がそれをいってしまってはおしまいです。教育は人間的な行為です。相手も自分も人間です。先生方が〈自分の感動をもとにした授業〉をしてくださることを願っています。

 本書に収録されている論文は,1974年の板倉聖宣氏の講演記録と,その頃,教育月刊誌『ひと』に発表された堀江氏の小学校2年生との授業記録です。

 この二つの記事を通して,読者は,「理科オンチ教師でも授業ができる」ということを通り越して「理科オンチだからいい授業ができている」ことを感じることが出来るでしょう。「なのに」ではなく「だから」なのですぞ。 

 最近でも,「生徒時代に落ちこぼれを経験したことのある教師は,できない子どもの気持ちが分かるのでいい授業ができる」…といわれることもあります。それも一理ある,少なくとも「こんなこともできないのか」と子どもを責めることにはならないから,と思はいます。

 が,それ以上に大切なことは,教師自身が感動して知ったことを「子どもにも伝えたい」という思いで子どもに伝えるという指導者の姿勢だと思うのです。

 もう40年近く前の文章なのに,全く古く感じないのは,教育界が根本の所でほとんど変わっていないことの証左なのでしょうね。
 10年ごとの指導要領の改正が,いつも「期待される人間像」から出発しているのですから,結局,子どもたちの思いからは,大きく離れているんです。だから,ずっと,現場は変わらないんでしょう。子どもたちは,社会の要請のために生きているのではない。子どもたちの生き方が次の社会を作っていくのです。

 こういう実践記録を読んで,少しでも,子どもの興味関心によりそった授業をしていきたいものです。

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坂井豊貴著『多数決を疑う-社会的選択理論とは何か』

 「選挙結果が民意であり,私たちは民意を受けたのである」と,時の為政者たちは威張り散らしているこのごろですが,今の日本の選挙結果は民意を反映していると言えるのか?
「何かがおかしい?」と思っている方は,是非,読んでみていただきたい。
 小学生の頃から多用されている「多数決」という決め方が,けっして民主的なものではないということも分かるし,多数決に変わる「選択方法」というものも教えてくれます。
 完全な形はないだろうけれども,よりベターな形ならあるでしょう。
 ルソーの『社会契約論』などについては,全く読んだことがないのですが,とても新鮮に学ぶことができました。『社会契約論』で説かれてきたことは,現代にも生きるんです。

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西村寿雄著『ウェゲナーの大陸移動説は仮説実験の勝利』

 ウェゲナーの大陸移動説は,以前,小学校の国語の教科書にも取りあげられていたので,その理論の浮き沈みの顛末のおよそのことは知っていました。
 また,教師になってから(30年以上前)も,少なからぬ学者が,「プレートテクトニクスによる大陸移動説は仮説であり,教育現場で教えるべきではない」というようなことを言っていることも聞いていました。
 本書は,ウェゲナーの著書の内容を軸としながら,「大陸移動説」が認められ,忘れられ,再評価されるまでの壮大な科学の歴史ドラマの一端を紹介してくれています。
 また,武谷光男氏の三段階理論を取りあげて説明しているあたりは,すとんと腑に落ちた気がします。現象論的段階であっても,それをしっかりと捉えることで,次が見えてくるんですからね。ウェゲナーの姿が「現象論的には私のいっていることは間違いない。実体や本質がどこにあるのかは,以降の科学者がきっと見つけてくれるだろう」というように見えて,なんか,達観しているなと思いました。
 科学的に考えるとはどういうことなのか? 専門家とは何か? いろんなことを考えさせられる本です。

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村上しいこ著『れいぞうこのなつやすみ』

 子どもうけするのにまちがいなし。読み聞かせする時には,しっかり関西弁を練習してからどうぞ。

 関西弁で展開する物語がおもしろい。お父さんもおかあさんもなかなかおもしろい。
 夏休みを謳歌したい冷蔵庫とその家族との話。
 冷蔵庫はプールへ行きたいというのだが…。

 ところで…
 ついこの間,海へ行ったら冷蔵庫がプカプカ浮いていた。扉はもうなかったけど,しずまないで,ここまで旅をしてきたんだ。なんと,冷蔵庫の中には,小さな電球も残ったまま。ハングル文字が見える。
 この冷蔵庫も旅をしようと思って朝鮮半島を出発したのだろうか。
 本の内容と関係ないか(^o^)

 とにかく,本書はおもしろい本でした。
 なお,本書には,姉妹本もあります。『ランドセルのはるやすみ』「ストーブのふゆやすみ』など,多数。

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『イソップ寓話集』

 研究会でイソップの話を聞いてから,自分でもイソップがどんな話を書いたのか読んでみたくなり,お薦めの訳者の本を読んでみました。文庫本は,眼がついていかないので,ワイド版はいいです。
 ここに収められているのが,歴史上の人物としてのイソップが書いたのかどうかも定かではないようなことも書かれていました。
 私が何よりも驚いたのは,「物語風」になっていないことです。
 少ない話は,たったの2~3行,多いときでも,2ページくらいしか話は続きません。いわゆる「あらすじ」でしかないのです。この短い文から,後々の人が,お話を膨らませて,子どもに聞かせられるように物語や絵本にしたんですね。
 動物だけではなく,神さまもたくさん出てきます。植物も話をします。
 中には,間男や男色の話などもあって,これまで持っていたイソップ童話のイメージが,読み進めるうちにどんどんくずれていく心地よさを味わうことが出来ました。
 予想外の内容で,おもしかったです。
 もちろん,ちゃんと,教訓も学びました。

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竹内早希子著『奇跡の醤』

 土曜日,1日で読んでしまいました。休日に一気に本を読み切るのは,久しぶりです。それほど,本書のいろんな場面で「今後どうなるのだろう」と気になりました。不謹慎な言い方になるかも知れませんが,物語の先が読みたくなる本でした。本書が著者の竹内さんにとって初めての著作だなんて思えないくらい,大変読みやすくてしかも臨場感あるルポになっていると思います。
 取りあげられている人物が,どの方も人間的な魅力にあふれています。その方々の言葉に,時々立ち止まりながら,読み進めました。いや,むしろ,立ち止まらないと読み進められなかったのです。
 本書の売上げの3%は,震災孤児の就学支援のための基金に寄付するそうなので,是非,ご自分で購入してお読みください。

 震災の悲惨さと共に,人間の生きる力を感じさせてくれる本です。
 八木澤商店のお醤油を味わってみたくなりました。

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松本徳重著『ひとことちから』

 子どもは,教師にいろいろと質問をぶつけてきます。それに対して,教師はどう答えればいいのか。答え方一つで,教師への信頼が増すこともあれば,逆になることもあります。
 本書には,子どもの質問の具体例と,その回答の一例が紹介されています。あるときは,上手く冗談で交わしたり,あるときは真剣に向き合ったり…。そういう意味では,教師のためのHowTo本と言えます。
 が,しかし,本書に出ている言葉を覚えて,それを子どもたちに返していくようなことでは,子どもの信頼は得られないと思います。それは,教師の回答に対する,子どもの返し方もさまざまだからです。
 私は,本書から「子どもの何気ない質問(それが教師のプライベートに関することであっても)には,真摯に向き合い,教師からもメッセージを返すことが大切である」ということを学びました。
 子どもたちは,特に若い教師には,気軽にいろんな質問をしてきます。そういう意味では,若者は読んでおいていい本かな。

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