書籍・雑誌

山口輝臣編『はじめての明治史』

 じっくり勉強した気分です。わりと読みやすかったけど,なんども眠りに落ちた。

 最近,「西郷どん」の影響か,明治が気になります。
 本書を読むと,「明治時代とはどんな時代だったのか」…その概略がつかめます。年号と天皇の世が一致していた最初の時代。天皇は死んだ後,明治天皇と呼ばれていますが,こういう風な諡のようなことは,明治からです。明治・大正・昭和・平成…このような日本のやり方がこれからも続くのか,それとも年号や天皇などはなくなっていくのか,それは,後世の国民の選択に俟つべきでしょう。
 少なくとも,この明治の時代は,そこで生きていた本人たち自身が「私は明治の時代を生きている」と思っていたということです。だからこそ,「明治史」という視点で歴史を見る必然性も出てくるのではないか…著者たちは,そう言います。
 本書は,東大教養学部前期課程の連続講義をまとめたものですが,ま,義務教育+αの日本史の教科書的知識があれば読めると思います。
 日露戦争のキッカケにも関わった「満韓交換論」という言葉は初めて聞きました。また,華族にについても,あまり詳しく知らなかったので,興味深く読めました。

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金子兜太著『あの夏,兵士だった私』

 俳人・金子兜太による〈魂の叫び〉が詰まっています。
 自分の母親との原体験,秩父での自然,そして,秩父音頭の5・7調のリズム。治安維持法により,俳句の仲間でさえも捕らえられる現実。そして,戦争なんて…と思いながらも志願して最前線に赴き,アメリカとの戦闘で死ぬよりも餓死者を多く見てきたトラック島での体験。敗戦後,捕虜になってからの贅沢な生活。帰国してからは,日銀に戻り,労働運動に精を出す。
 自らを「自然児」「荒凡夫」「存在者」「自由人」として生きると決め,そのとおり生きようとしてきた兜太。
 最後の最後まで「アベ政治を許さない」と書き綴った本書は,戦争の惨さ・惨めさを腹の底から知っている兜太からの熱い熱いメッセージです。
 反戦川柳作家・鶴彬のことにも触れていますよ。

 身体は「定住」の世界に置きながら,時折,魂を「原郷」の世界に浮遊させることにした。それが「定住漂白」,「定住」と「漂白」の両方を併せ持つ概念です。(180p)

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中村高康著『暴走する能力主義-教育と現代社会の病理』

 いやー,読んでいてスカッとする本でした「これからの能力」「21世紀型能力」「ホンモノの力」「新しい学力」などといって,現場に次々と襲いかかる「能力開発」の圧力…それを冷静に読み解くと,あら不思議,何にも新しいことはないし,これからも人間は生きていくし,子どもたちはちゃんと育っていくし,学校も今までどおりでいいじゃない。少なくとも,これまでやってきたことをじっくりとふり返りながら,子どもに寄り添っていこうじゃないか…と,そんなことを考えてしまう本でした。
 いつの時代も「新しい能力をつけよう」とあたふたしてきた教育界。なにか「新しそうなことを打ち出すと,本当に新しいことが始まるのではないか」と思っているだけの教育界。この本で指摘されているような「能力主義」の原理を知らない人たちは,右往左往するばかり。めいわくを蒙るのは,当事者である子どもたち。
 反知性主義がはびこる日本社会の典型が,昨今の「能力主義」をめぐる議論の世界にあると思いました。
 今までどおりで大丈夫です。地に足をつけて進みましょう。

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ティエリー・デデュー著『ヤクーバとライオン2(信頼)』

ライオンとの闘いを拒否したために牛飼いとして平凡な日々を送っていたヤクーバの元に,腹を空かせたそのライオンがやってくる。ヤクーバは,育てている牛を失うわけにはいかない。一方,ライオンだって自分たちの命がかかっている。さて,今度こそ,二人(二匹)はたたかうことになるのか。
『ヤクーバとライオン』の続編。信頼とはなにか? 闘わなければならない状況は,やはりあるのか…ネタバレになるのでやめておきますが,やはり考えさせられる本です。

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ティエリーデデュー著『ヤクーバとライオン(1)勇気』

読書ボランティアの方が,子どもたちに紹介してくれた本。
一人前の男になるためにはライオンを倒さなければならない。しかし,ヤクーバは,傷ついたライオンを助ける。勇気とは何か…戦うことが真の勇気なのか…と問う。柳田邦夫氏の「あとがき」も一読の価値あり。闘いに明け暮れる人類に外の道を示してくれる良本。

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松沢裕作著『生きづらい明治社会-不安と競争の時代』

 明治とは一般庶民にとってどんな時代だったのか? 今,「明治の良き時代から学べ」というような言葉が政権側から盛んに出てきているような気がするが,ほんとうに,学ぶことはあるのか? 一度,立ち止まって冷静になって明治を学び直してみましょう。そんな本でした。
 クーデターで政権を取った明治政府(薩摩・長州たち)でしたが,お金がありません。そこで,考えたのが「廃藩置県」。税金をすべて政府に入るように無理矢理やります。地租の3%。しかし,これは固定だったために,またまたお金に困ります。すると,今度は紙幣を増やすというなんとも考えられない政策をし,インフレ社会に…。
 その後も,一般庶民にとっては,そんなにいい時代ではなさそうです。
 明治維新が大きな時代の変化を起こしたことは間違いありません。が,今,この時代に,明治の人の生き方から学ぶことってなんでしょうか。
 少々貧しくてつらくてもガマンして国家のために働く。そんな必要が今あるのか? もし,万が一あるとすれば,明治時代と同様に,どこかに無理が来ている証拠です。
 「貧民窟」や「恤救規則」などという言葉は,本書を読むまで聞いたこともありませんでした。やっぱり,勉強はするもんですね。
 本書で一番わかりやすかったのが「通俗道徳」の話です。「通俗道徳」は現代にも通じる日本人が持っている道徳心であり,現代もまた,ここをクリアしないと社会保障制度が立ちゆかなくなりそうです。実際,明治時代と同じような事を言い出している若者たちもいます。
 ビジネス書のコーナーから,成功物語ばかりを手に入れて読んでいるようでは,すでにあなたは「通俗道徳」の魔の手にかかっています。
 ビジネス書を読む前に,まずは,本書を読みましょう。 

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A.アインシュタイン&S.フロイト著『ひとはなぜ戦争をするのか』

 これは,あの相対性理論のアインシュタインと精神分析のフロイトとの往復書簡である。国際連盟がアインシュタインに依頼して実現したらしい。
 たった1回きりの書簡で,とても短い手紙だが,二人の著者に触れたことにある者としては,なかなか興味深い。
 本書には往復書簡以外にも,解説が充実していて,こちらの方の内容が濃いと思うかもしれない(実際,わたしは,そう思った。手紙自身は,その珍しさから読んでみたくなる)。
 一人は養老孟司。もう一人は斎藤環氏。本書の半分以上のページを使っての解説である。二人の書簡の現代的意味を説き明かしてくれて,なかなか読み応えのある解説だった。

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戸森しるこ著『ぼくたちのリアル』

 クラスの子が「おもしろかったから読んでみて」と持って来た本。彼女も,1年先輩から教えてもらったらしい。
 3人の5年生の男子が繰り広げる世界。いろんな物を背負って生きている子どもたちが,本当の自分を見せないでつきあっている。それは,たぶん,今の教室にも普通にあるであろう世界。それが,ゆっくりと溶け合い(本人の成長もある),本当の自分を少しずつ出していく。結果,より深まる絆…。
 現実の子どもたちには,この3人のような極端さはないけれど,やはり,こういうのを読んだ子どもたちは,自分を振り返って感じることはあるだろうな。

 「この本を読んで,発表会の劇を考えようと思った」という彼女。できた台本は,少しちがう感じになったけど,個性というもののとらえ方を考えなおすキッカケにはなったかな。

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谷崎潤一郎著『春琴抄』を読む

 ま,無料じゃはないと読もうとは思わない題材だけど,読んでみると。谷崎の小説は,なかなかおもしろい。
 変な男女関係が得意なのかな。目の見えなくなった春琴のために,自らの目を傷つける…なんて,すごい愛…これて,たぶん変人なんだけど,こういうところに注目する谷崎って,いつも何を考えていたんだろう。確かに,こんなに深い愛はないかも。なんとなく納得するように書かれているから怖い。

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高野圭著『たのしく教師デビュー』

 一度は一般の会社に働いた高野さんが,明星大学の通信で教員免許状を取得し,高校に勤め,そして3年が経った…そんなころの事が綴られている本です。
 高野さんは,明星大学で,仮説実験授業とその考え方に出会います。そして,採用された現場でも,子どもたちと仮説実験授業をしたり,生徒指導でも,その考え方で接したりしていく中で,「先生の授業は楽しい」「先生のこと好き」「だいきらいな物理も楽しくなってきた」などと言ってもらえるようになるのです。
 ベテランの教師でなくても,子どもたちに歓迎される授業はできる。しかも高校でも可能である。そんなことを示してくれる内容でした。

明星大の恩師・小原茂巳さんのこんな言葉に,私も深く共感しました。

 だから,「〈意欲〉のない子ども達がいてあたりまえ」と思っていた方がいいですね。子ども達に対して,「意欲があるのがあたりまえ」と思ったら,…中略…「その態度はなんだ!」という風に,ムカついてしまいますから(笑)…中略…教師の役割として一番大事なのは,「興味を持続できること」=「〈意欲〉を持ってもらうこと」だと思うんですよね。(193p)

 意欲がないのは,子どもが悪いわけではないんです。これだけでも共通理解できると,学校はもっともっと子どもが過ごしやすい場所になるんですがねえ。

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