書籍・雑誌

西村寿雄著『ウェゲナーの大陸移動説は仮説実験の勝利』

 ウェゲナーの大陸移動説は,以前,小学校の国語の教科書にも取りあげられていたので,その理論の浮き沈みの顛末のおよそのことは知っていました。
 また,教師になってから(30年以上前)も,少なからぬ学者が,「プレートテクトニクスによる大陸移動説は仮説であり,教育現場で教えるべきではない」というようなことを言っていることも聞いていました。
 本書は,ウェゲナーの著書の内容を軸としながら,「大陸移動説」が認められ,忘れられ,再評価されるまでの壮大な科学の歴史ドラマの一端を紹介してくれています。
 また,武谷光男氏の三段階理論を取りあげて説明しているあたりは,すとんと腑に落ちた気がします。現象論的段階であっても,それをしっかりと捉えることで,次が見えてくるんですからね。ウェゲナーの姿が「現象論的には私のいっていることは間違いない。実体や本質がどこにあるのかは,以降の科学者がきっと見つけてくれるだろう」というように見えて,なんか,達観しているなと思いました。
 科学的に考えるとはどういうことなのか? 専門家とは何か? いろんなことを考えさせられる本です。

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村上しいこ著『れいぞうこのなつやすみ』

 子どもうけするのにまちがいなし。読み聞かせする時には,しっかり関西弁を練習してからどうぞ。

 関西弁で展開する物語がおもしろい。お父さんもおかあさんもなかなかおもしろい。
 夏休みを謳歌したい冷蔵庫とその家族との話。
 冷蔵庫はプールへ行きたいというのだが…。

 ところで…
 ついこの間,海へ行ったら冷蔵庫がプカプカ浮いていた。扉はもうなかったけど,しずまないで,ここまで旅をしてきたんだ。なんと,冷蔵庫の中には,小さな電球も残ったまま。ハングル文字が見える。
 この冷蔵庫も旅をしようと思って朝鮮半島を出発したのだろうか。
 本の内容と関係ないか(^o^)

 とにかく,本書はおもしろい本でした。
 なお,本書には,姉妹本もあります。『ランドセルのはるやすみ』「ストーブのふゆやすみ』など,多数。

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『イソップ寓話集』

 研究会でイソップの話を聞いてから,自分でもイソップがどんな話を書いたのか読んでみたくなり,お薦めの訳者の本を読んでみました。文庫本は,眼がついていかないので,ワイド版はいいです。
 ここに収められているのが,歴史上の人物としてのイソップが書いたのかどうかも定かではないようなことも書かれていました。
 私が何よりも驚いたのは,「物語風」になっていないことです。
 少ない話は,たったの2~3行,多いときでも,2ページくらいしか話は続きません。いわゆる「あらすじ」でしかないのです。この短い文から,後々の人が,お話を膨らませて,子どもに聞かせられるように物語や絵本にしたんですね。
 動物だけではなく,神さまもたくさん出てきます。植物も話をします。
 中には,間男や男色の話などもあって,これまで持っていたイソップ童話のイメージが,読み進めるうちにどんどんくずれていく心地よさを味わうことが出来ました。
 予想外の内容で,おもしかったです。
 もちろん,ちゃんと,教訓も学びました。

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竹内早希子著『奇跡の醤』

 土曜日,1日で読んでしまいました。休日に一気に本を読み切るのは,久しぶりです。それほど,本書のいろんな場面で「今後どうなるのだろう」と気になりました。不謹慎な言い方になるかも知れませんが,物語の先が読みたくなる本でした。本書が著者の竹内さんにとって初めての著作だなんて思えないくらい,大変読みやすくてしかも臨場感あるルポになっていると思います。
 取りあげられている人物が,どの方も人間的な魅力にあふれています。その方々の言葉に,時々立ち止まりながら,読み進めました。いや,むしろ,立ち止まらないと読み進められなかったのです。
 本書の売上げの3%は,震災孤児の就学支援のための基金に寄付するそうなので,是非,ご自分で購入してお読みください。

 震災の悲惨さと共に,人間の生きる力を感じさせてくれる本です。
 八木澤商店のお醤油を味わってみたくなりました。

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松本徳重著『ひとことちから』

 子どもは,教師にいろいろと質問をぶつけてきます。それに対して,教師はどう答えればいいのか。答え方一つで,教師への信頼が増すこともあれば,逆になることもあります。
 本書には,子どもの質問の具体例と,その回答の一例が紹介されています。あるときは,上手く冗談で交わしたり,あるときは真剣に向き合ったり…。そういう意味では,教師のためのHowTo本と言えます。
 が,しかし,本書に出ている言葉を覚えて,それを子どもたちに返していくようなことでは,子どもの信頼は得られないと思います。それは,教師の回答に対する,子どもの返し方もさまざまだからです。
 私は,本書から「子どもの何気ない質問(それが教師のプライベートに関することであっても)には,真摯に向き合い,教師からもメッセージを返すことが大切である」ということを学びました。
 子どもたちは,特に若い教師には,気軽にいろんな質問をしてきます。そういう意味では,若者は読んでおいていい本かな。

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坂井豊貴著『「決め方」の経済学』

 多数決でなんでも決められるのか? 多数決は民主的と言えるのか? 多数決に疑問をもっている方,必読の本を『たのしい授業』の書評で教えてもらいました。

 副題に「みんなの意見のまとめ方」を科学する-とあるように,本書は,人々の多様な考えの状況を如何に正確に捉え判断するかを解説した本です。
 本書を読むまでもなく,単なる多数決は,民主的な方法とは言えません。しかも多数派が少数意見を全く無視したような多数決は「多数の横暴」とも言えます。さらに,3択や4択があるときの多数決は,死に票がたくさん出たり,本来のベターではない人が選ばれたりする可能性もあります。
 本書は「決め方を変えると結果が変わる」ということを具体的に示してくれるています。「民意は選挙結果から分からない」ことも,教えてくれます。
 この決め方が絶対正しいというのはないようですが,ボルダルールなどは,なかなかおもしろい方法です。ボルダールールは「広く指示されている人」が選ばれる方法です。
 決め方を変えると,歴史が代わり,もしかしたら今のイスラム国も誕生しなかったかも知れない…という話も出てきます。

 今の日本の選挙制度ももっと民意を反映するようなモノにしていかないと,選挙そのものに興味が出ないという状況は変わらないでしょう。「私の一票が生きている」と思うからこそ,人は投票に行くようになると思うからです。
 その方法として,著者は,マスメディアに期待しています。世論調査の折りに「あなたはどの政党を支持していますか」と聞くのではなく,ボルダルールや総当たり戦ルールで聞くのです。そうすることで,民意を反映した,よりよい国会議員の構成の姿が浮かびあがってくるのではないか。

 多数決は,どうでもいい内容の時に使うものである。
 ねーねー,今日のお昼何にする?

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あきやまただし著『へんしんマラソン』

 ある言葉をくり返しているうちに,違う言葉が出てくる…というだけの絵本。
 例えばかまっ,かまっ,かまっ,かまっ…」といっている間に「まっか,まっか,まっか…」なるという感じ。
 子どもたちは,次のページに出てくる変身言葉を予想しながら見てくれるので,読み聞かせにピッタリです。
 本シリーズはたくさん出ています。
 低学年の補欠に行ったときなどに,ちょろっと読んであげると喜んでくれると思いますよ。

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すとうあさえ著『ざぼんじいさんのかきのき』

 『たのしい授業』誌上で紹介されていた絵本を読んでみました。図書室にあったので…。

 けちなじいさんと,やさしいばあさん。
 昔話から,こういうパターンはあって,本書もまた,そのように期待通り進んで行きます。
 じいさんが改悛するのはいつなのか? 大人は,先が読めてしまいます。子どもも,このままいくとヤバいことになりそう…と分かってくると思います。
 ざぼんじいさんのけちな態度に対して全く対決しようとしないばあさんという組み合わせが,読後を爽やかにします。

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出口陽正著『数学教育近代化運動と仮説実験授業』

Sugaku 著者の出口さんは,仮説実験授業研究会で,算数・数学の授業書を数多く作成してきた人です。板倉聖宣さんの方法論に学び,実験できる算数を中心とした授業書や仮説証明授業と言った,新しい分野の開拓を進めて来ました。私も,そのうちいくつの授業書を授業にかけ,子どもたちから喜ばれた経験がたくさんあります。
 さて,本書は,わが国の算数数学教育の歴史を紐解き,算数数学教育がいかに改革しようとされ,実際に改革されてきたのかが,コンパクトにまとめられています。その歴史をふり返る作業は,同時に,出口氏ご自身が研究・作成してきた授業書が,数学教育史上でどんな位置を示すのかを探る作業でもあります。
 第1部は「実験できる算数/数学の系譜」。授業書《2倍3倍の世界》に関わって,以前にはどのような実践例があったのかを明治まで遡って調べています。ジョン・ペリーや小倉金之助など,とても興味深い数学教育実践家がいたことが紹介されます。ここでは,《2倍3倍》に出てくる面積や体積の大きさ比べをするときに重さで調べる方法がずっと前に開発さていたことも出てきます。
 第2部は「対数グラフとその教育の歴史」。これは《0と1》という授業書を開発するに際し,その授業書の教育的意味・歴史的位置づけを調べるべくまとめたというレポートです。
 対数グラフがいつ頃から使われてきたのか,だれが作ったのか? どうして今の教科書からは消えているのか…など,謎解きのような感じで読むことができます。対数グラフの便利さは,知っていないと分かりません。「対数」と聞いただけで毛嫌いしてからでは遅い。もっとはやい段階からこのグラフを導入できれば,社会を見る〈ものの見方・考え方〉に大きく影響すると思いました。
 これまでも,数学教育史の本をいろいろ探してきましたが,遠山啓さんの著作集に少しあるくらいで,なかなか見つかりませんでした。ならば,書いてしまえ…というのが,出口さんのお仕事でした。
 本書のように,各論突破で算数数学教育史を調べることで,算数数学教育が歩んできた全体像が少しずつ見えてくるんだろうなと思います。

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山路敏英編集『あなたお葬式どうする?』

Ososiki 私が所属している研究会は,子どもたちに科学的な考え方を身につけてもらおう,科学を好きになってもらおう,そして何より自分を好きになってもらおう…そのためには,どんな教材を用いてどんな教え方をすればいいのか…ということを研究する団体です。で,当然ながら,考え方そのものも,科学的であろうとするので,信仰面では無宗教の方々がいっぱいいます。
 ま,わたしの家には仏壇もあるし,代々(と言っても,そんなに昔じゃないだろうけれども),浄土真宗本願寺派のお寺さんの檀家でもありますので…私自身は無宗教でも…お墓の心配もしなくていいのですが,都会の人たちは,そうも言っていられません。そこで,研究会の中では,本書のようなことも研究することになるのです。
 なかなかユニークな内容の本でした。

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