書籍・雑誌

堀切リエ著『田中正造:日本初の公害問題に立ち向かう』

 2月後半は,田中正造と足尾銅山・谷中村などについて調べてみようと…手始めに,子ども向けの伝記を読んで,頭の中で大枠を確認。

 
 同伝記シリーズには,やなせたかしもいたりする。小学生向きの新しい伝記シリーズの一冊。
 巻末には「正造ゆかりの人物」の紹介コーナーなどもあって,ちょっとくわしく調べようと言う人に優しい作りとなっている。
 参考資料には,20数冊の著作だけではなく,DVDや関連映画なども紹介されていて,大人がもっと詳しく調べたい時にも重宝すると思う。
 子ども向けと馬鹿にせず,まずは,手にとってみるのも悪くないな。
 それにしてもこんなに何度も牢屋に入っていたとは知らなかった…。どれも言いがかりみたいなことが原因だが。

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鎌田慧著『反骨-鈴木東民の生涯』

 東郷茂徳の伝記を読んでいたら,この人の名前が出てきた。読売新聞社にいたらしい…ネットでググってみると,なかなかおもしろい人生を歩んだ人のよう。気になってしまったので,手に入れて読んでみたのが本書ってわけ。
 いやー,この伝記は面白かった。鈴木東民,おもしろい。こんな人が日本にいたなんて,これまでまったく知らなかった。
 東北の田舎に生まれ,第二高等学校をなんと6年もかけて卒業し,その後,東京帝国大学を4年ですんなり卒業。その間,学校の矛盾に対して抗議行動を組織したり,情宣を作ったりして,民主的な学校を作る運動を起こしていく。青年時代の東民は,いろんな人(吉野作造など)の影響を受けながら,民主的な社会を求める反骨の闘志として成長していくのだった。
 戦前は,新聞記者としてドイツのベルリンに派遣になっていながら,現場から反ナチスの記事ばかり書くというのでナチスから国外退去命令が出され,祖国に帰ってくる。しかし帰国してからも,東民の筆調は冴えわたる。だが,時代は治安維持法のまっただ中。結局,筆を行かす機会を奪われて,一線を退かざるを得なくなる。

 戦後は,読売新聞にもどり,日本の初の労働組合運動と言ってもいい第1次読売争議(なんと1945年のことだ)で,正力たち経営派に勝利してするも,第2次読売争議ではGHQの方針転換もあって,敗北。結局,読売を辞めさせられる。
 その後,何度か国政選挙に臨むがいずれも落選。途中,日本共産党に入党するも,肌が合わずに2年あまりで離党。

 そして,なんと地元釜石市(合併したばかりの市)の第1代市長となる。東民は,市長となってからも,当然,民衆のために行動する。公害反対運動のデモには先頭に立ったこともある。新日鉄釜石製鉄所による公害問題が大きな課題でもあった。
 しかし,第4度目の市長選には敗北。
 それにもめげずに,今度は,釜石市議会選に立候補し,見事トップ当選を果たす。市長だった人物が市議選に出ること自体稀なこと。ここでも,新市長と堂々と渡り合う姿があった。が,市議1期で落選することになる。
 「反権力・反公害運動を展開,一生を時流に媚びず反骨に生きた(帯の文句)」人であった。

 本書の内容は,とてもよく調べられていて,大変読みやすく,しかも資料も豊富である。東民の人となりがよく分かるエピソードも満載。さすが,ルポの鎌田慧だ。
 こういう人が日本にいたことを誇りに思うし,今一度,政治というものが民衆のものになっているのか,反省してみるべき時に来ていると思う。
 東民の奥様ゲルトルートも,東郷茂徳の妻同様ドイツ人である。これも何かのつながりか(実際,茂徳がドイツ大使だったときに,東民とドイツで会っている)。
 そうそう,敗戦前,再度,外相になった東郷に対し,岩手にいた東民はわざわざ東京へ面会に行っている。2時間半ほど話をしたようだ。東民には,茂徳が戦争を終わらせるために外相となったことが十分伝わったと思われる。
 さらにつけ加えると,なんと,東民は宮澤賢治と同じ謄写屋でバイトした仲である。1920年頃のことらしい。次の年,帰郷した東民は宮澤家の実家に招待されてご馳走になったとも書かれている。いやー,これまた,おもしろい。

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姜尚中著『維新の影』

 年に数回,無性に本が読みたくて,他の仕事をするよりも本を読み続けたいという気持ちになることがあります。この1月~2月にかけても,そういう状態が続いています。
 先週は,一度に6冊の本を注文してしまいました。本を増やさないでおこうと思っているのですが,だめですね。
 そんな中の一冊です。姜尚中さんの本は,いいなあ。落ち着く。あの口調で語りかけられているような気分になってきます。

 姜尚中氏が,日本の地方を実際に訪れて,その土地の歴史を肌で感じながら思索したことを集成した本です。
 特に,明治維新から150年になる今年(2018年),その明治維新が,その後の日本に与えた影響というものがどういうものだったのかを考える旅になっていて,読者に「明治国家」をもう一度考えるキッカケを与えてくれます。
 ともすると,明治国家バンザイになってしまいそうな雰囲気も感じられて,ここはしっかりと,明治維新がもたらした功罪を捉え直しておきたいです。
 姜尚中氏の本には,普段,私が使ったことのない日本語があちこちにあって,そういう言葉に触れるのも一興です。また,夏目漱石の言葉もあちこちにちりばめられており,漱石の作品も読んでみようかなという気にさせてくれます。

 個人的には,谷中村の話をもう少しつっこんで調べてみたいと思いました。

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門脇厚司著『異色の教育長 社会力を構想する』

 教育関係者にお勧めします。まだまだ可能性はある。子どものために,現場の教師にもっと自由な研究の場を!!

 教育社会学の学者で,筑波大学名誉教授でもある門脇厚司氏が,なんと茨城県の美浦村の教育長に。大学の研究者が教育長になるというのは珍しいこと。門脇氏が,教育長在職6年間で行った教育施策は,著者がいう「社会力」を育んでいこうというもの。それは児童生徒だけではなく,保護者・村民にも広く働きかけるものだった。
 門脇氏は,この間の政府主導型の教育政策に危うさを感じている学者でもあり,それを全面に出して教育長職を全うしているところがすごい。
 例えば議会に対しては,次のように述べている。

 こうした教育問題に関わる質問に対しては,現状の説明も含め答弁書も自分で作り,教育長として積極的に答弁することにした。単に議会を無難に乗り切るというのではなく,答弁を通して,美浦村の教育の現状や方針を議員たちに理解してもらう,絶好の機会と考えていたからである(本書64ぺ)。

 そして,他の教育長や校長たちが,いろいろな会議に於いても,なにも自分の意見を言わす唯々諾々と上からの指示に従っているだけであることに対して,日本の教育界が思った以上に,瀕死の状態にあることも指摘している。教育長はもっと質のよい人間にさせるべきだともいっている。
 また,現場の教師に対してもきびしい。今の現場が長時間労働で大変であることについての理解は示しながらも,「教師として学ぶ姿勢」「子どもたちにこれは伝えたいという思い」などが,すこぶる低レベルであることに,失望もしている。さらに,教職員組合にも手厳しい。文科省がいかなる政策を出してこようが,ここでもただ従うだけ。「教え子を再び戦場に送るな」の精神がまったく感じられないと嘆くのである。

 ただ,せめてこれだけは…という提案もしてくれている。
 現場の教師に対しては「自分の眼の前にいる子どもたちのこれからの人生を見通す眼をしっかりと持ってほしい」という。そうすれば,学力テストの1点2点で一喜一憂する必要もないことに気づくだろう。
 文科省に対しては,「たった一つの注文」として「教員たちの自由裁量度をできるだけ大きくしてほしい」ということだ。
 教科書と教師用指導書だけを見て授業をこなすだけの教師を作ってきたのは他ならぬ文科省なのだ。なのに,かけ声だけは「教師は創造的であれ」といわれても困る。そんな現状を打破するには,現場の自由度を上げることが大切。
 著者は,現在(本書が発行された2017年12月)つくば市教育長のよう。今後とも,どんな実践をされ,どのような成果を出すのか,楽しみな教育長である。

 ただ,本書に収録されている文章は,すでに発表済みのものを集めているものもあり,内容が重複しているのが殘念である。もう少し,筆を入れてから出版したほしかった。
 ま,このことを考慮しても,すべての教育長・校長・現場教師に読んでもらいたい文章である。

 

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伊集院静著『文字に美はありや。』

 中国の王羲之から,鑑真・空海,信長・秀吉・家康,そして北野武の書まで,古今アジアの毛筆での書を紹介しながら「美しい字とは何か」というようなことについて語られている本。
 今年,小学校の習字の授業で,教科書にある楷書だけではなく,時折,さまざまな書を紹介して(その中には,王羲之さんの文字もあった),子どもたちと楽しんできた私の触手に引っかかった本です。もう少し前ながら,まったく興味もなく,手に取ることもなかったかも知れません。
 「文字に美はありや」の答えは,人それぞれ。自分の心にピッタリきた字が,自分にとっては,一番の「いい書」なんでしょうな。
 伊集院氏の,幅広い知識が発揮された,読んでいて楽しい本でした。
 自分でも書を書いてみようって思ったりもする本です。

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東郷茂彦著『祖父東郷茂徳の生涯』

180127   太平洋戦争の開戦時と終戦時に外務大臣だった東郷茂徳氏の伝記。著者は,茂徳の双子の孫のうちの一人の東郷茂彦。彼は,ワシントンポストの記者です。
 2段組,500ページに及ぶこの伝記は,茂徳本人が巣鴨の獄中で綴った自伝『時代の一面』の内容はもちろんのこと,この自伝には触れられていなかった時代のこと(生まれなど)も詳しく書かれています。しかも,家族に宛てた手紙や単なるメモなどについても触れられているので,茂徳の人となりやその時の気持ちなどもより分かりやすく,親しみやすくなっています。
 さらに,多くの既存の文献に当たるだけではなく,自分の足で200人以上もの人たちに聞き取りをしているところもまた,本書を読み応えのあるものにしています。
 これだけ分厚いものを読むのは,久しぶりでした。
 それにしても,自分を有罪にした東京裁判についてさえ,時代が前に進んで証拠だといっている茂徳。たいしたもんです。

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萩野貞樹著『𦾔漢字-書いて,覺えて,樂しめて』

 戦前の教科書などを読んでいると,尋常小学校向けなのに難しい漢字がたくさん出てきます。
 戦後,それまで使用していた漢字が簡略化されたために,世代間で壁が出来ているのです。
 「学」は「學」というのは,まだいいとして,「昼」が「晝」などは難しいかも。
 また,漢字の成り立ちを知りたい時には,旧字体を知らないとその意味が分かりません。ウ冠じゃないのに,ウ冠にさせられている字があったりすると訳がわかんないですよね。
 一度,こうして一冊の本で旧字体を俯瞰しておくと,旧字体があるということは知れるわけです。

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吉川猛夫著『私は真珠湾のスパイだった』

 先の大戦の折,ハワイのホノルル領事館に勤めながら,真珠湾の米軍艦の様子を逐一日本に送り続け,ついには,真珠湾への奇襲攻撃を可能ならしめた日本のスパイがいた。それが,著者の吉川猛夫である。当時は,喜多総領事以外,本当の彼の姿を知っている人はいない。偽名を使っていた。まずは,味方から欺いていたのだ。
 たった一人で,現地のFBIに怪しまれることなく数ヶ月間スパイ活動を行った,その方法などが,詳細に記されている。
 ビックリしたのは,吉川本人も,自分が何の為に真珠湾の様子の報告をしているのか,知らされていなかったということだ。吉川が「日本軍は,もしかしたら真珠湾へ攻撃に来るのかも…」と思ったのは,ずっと後のことだった。

 本書に書かれていることは,NHKの歴史秘話ヒストリアで初めて知った。あの番組も,おもしろかったが,やはり,本を読むと,もっといろんなことが知れて興味深い。

 真珠湾攻撃後,捕まってからのことや,日本に帰ってからも逃げ回っていたことなども,また,興味深い。

 元海軍少尉の吉川猛夫という一人の人間が国家に翻弄される姿は悲しいのだが,なぜか,彼の生き方に,感動も覚えるのだ。

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東郷茂徳著『時代の一面』

 単行本を読んだけど,ネットに画像がないので,文庫本の画像で紹介します。

 本書は,大東亜戦争開戦時と終戦時の2度外務大臣の任にあった東郷茂徳が,東京裁判に於いて禁固20年の刑を受け,巣鴨の獄中にあるときに書き綴った自分の半生を描いた自伝である。本人は「自伝」とは言っていないが…。
 本書を読むと,彼が,早くから欧米の社会や思想に造詣が深く,広い眼で祖国日本を見ていたことがよく分かる。奥様もドイツ人である。
 日独伊三国同盟に反対したり,対米戦争をなんかして避けようと努力したりする姿からは,「開戦決定時の外相であったために処罰を免れない」というにはあまりにかわいそうにも思えてくる。
 敗戦後,鈴木内閣が総辞職したあと,次の東久邇内閣の外相に再度誘われた際,
「太平洋戦争勃発前自分は極力平和的解決に努力次第であるが,其際の外務大臣であったから敗戦の此際に於いては戦争犯罪の問題発生すべき懸念もある」
と辞退していることから,本人はその責任を感じていたのも確かであるが…。
 終戦前,鈴木貫太郎首相から外務大臣就任を頼まれた時(1945年4月),茂徳は以下のように述べて,戦争を始めてしまった責任を取ろうとしている。
「自分として本戦争の発生を防止せん為め苦心を重ねた訳であるから,出来るだけ速やかに之が終結を計ることには喜んで尽力したい…」
と前向きな態度を示している。そして,実際,軍部とやり合いながら,日本を終戦へと導いていった一人なのだ。
 本書は「時代の一面」と題された書である。彼が生きた時代の一面は,「一面」というにはあまりにも広く重いものだったに違いない。

 「経済政策」という名の圧力が,日本を太平洋戦争開戦へと追い込んだことを思うと,今の時代,北を同様の圧力で追い込むことの怖さもまた,見えてくる。
 私たちは,歴史から学ぶべきである。
 戦争で亡くなった人たちへの弔いは,英霊として祀り上げることではなく,二度と,戦争で亡くなる人をつくらないことなのだから。

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ジョン・ロッコ著『くらくてあかるいよる』

 学校の図書室にあった絵本です。
 この題名をみて,内容が予想できなかったので,読んでみたくなって手に取りました。
 これ,大人向けの本です。
 夜,暗くなって明かりがともり,大人たちは家に帰ってきます。もちろん,子どももいます。子どもは大人に遊んでほしくて,みんなでできるゲームなどを出してくるのですが,大人は「忙しいから」と言って遊んでくれません。子どもは仕方なく,一人でできるゲーム機で遊んでいます。
 その時,突然,停電します。あたりは真っ暗。これが「くらくて」の部分です。
 さて,その後,この家族はどうしたのでしょう。
 そして,電気が通じた後は,どうしたのでしょう。

 自分の子育てをふり返るキッカケとなる絵本でした。
 スマホに夢中になっている保護者に読んでもらいたいもんだ。

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