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出口陽正著『数学教育近代化運動と仮説実験授業』

Sugaku 著者の出口さんは,仮説実験授業研究会で,算数・数学の授業書を数多く作成してきた人です。板倉聖宣さんの方法論に学び,実験できる算数を中心とした授業書や仮説証明授業と言った,新しい分野の開拓を進めて来ました。私も,そのうちいくつの授業書を授業にかけ,子どもたちから喜ばれた経験がたくさんあります。
 さて,本書は,わが国の算数数学教育の歴史を紐解き,算数数学教育がいかに改革しようとされ,実際に改革されてきたのかが,コンパクトにまとめられています。その歴史をふり返る作業は,同時に,出口氏ご自身が研究・作成してきた授業書が,数学教育史上でどんな位置を示すのかを探る作業でもあります。
 第1部は「実験できる算数/数学の系譜」。授業書《2倍3倍の世界》に関わって,以前にはどのような実践例があったのかを明治まで遡って調べています。ジョン・ペリーや小倉金之助など,とても興味深い数学教育実践家がいたことが紹介されます。ここでは,《2倍3倍》に出てくる面積や体積の大きさ比べをするときに重さで調べる方法がずっと前に開発さていたことも出てきます。
 第2部は「対数グラフとその教育の歴史」。これは《0と1》という授業書を開発するに際し,その授業書の教育的意味・歴史的位置づけを調べるべくまとめたというレポートです。
 対数グラフがいつ頃から使われてきたのか,だれが作ったのか? どうして今の教科書からは消えているのか…など,謎解きのような感じで読むことができます。対数グラフの便利さは,知っていないと分かりません。「対数」と聞いただけで毛嫌いしてからでは遅い。もっとはやい段階からこのグラフを導入できれば,社会を見る〈ものの見方・考え方〉に大きく影響すると思いました。
 これまでも,数学教育史の本をいろいろ探してきましたが,遠山啓さんの著作集に少しあるくらいで,なかなか見つかりませんでした。ならば,書いてしまえ…というのが,出口さんのお仕事でした。
 本書のように,各論突破で算数数学教育史を調べることで,算数数学教育が歩んできた全体像が少しずつ見えてくるんだろうなと思います。

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