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小林秀雄著『ゴッホの手紙』

 いやー,おもしろかったです。
 著者の小林さんは,受験の現代文の問題によく出てくる人じゃなかったかな。私の学生時代は…ですが。
 著者が,あるゴッホの絵に魅せられ,どうしてもその絵が欲しくて…そのうち,ゴッホがたくさんの手紙を遺していることを知り,知人からその手紙が紹介されている本を借りて読み始めます。それらの手紙から,ゴッホの「生きる姿」がバシバシ伝わってきて,結局,こういう評論を書いてしまったようです。
 ただ,本書は,評論というよりも「ゴッホの伝記」になっています。副題にも「書簡による伝記」と書かれています。
「それよりも意外だったのは書き進んで行くにつれ,論評を加えようが為に予め思いめぐらしていた諸観念が,次第にくずれていくのを覚えた事である。手紙の苦しい気分は,私の心を領し,批評的言辞は私を去ったのである。手紙の主の死期が近付くにつれ,私はもう所謂『述べて作らず』の方法より他にない事を悟った。読者は,これを諒とされたい。(本書221ペ,新字体に改めました)」
 著者が言うように,後半は,まったくゴッホの手紙に語らせるだけ語らせている感じです。だからこそ,ゴッホが生に悩みながら生きていた様子が伝わってきます。
 さて,本書には,ところどころにゴッホの絵の写真が添えられています。絵は白黒ですが,一部を糊で貼ったようになっていて,こんな本を見るのは初めてです。
 また,本書は旧仮名遣いで書かれていて,その点,のちに出た『小林秀雄全作品20』の方が圧倒的に読みやすいです。しかし,出版当時の雰囲気を感じたい方は,古本を手にとってもらった方がいいかも…。ただし,『全作品』のように注釈はないので,読みやすさはその面でも劣ります。

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