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馬場錬成著『大村智物語』

 盟友から借りて読んだ本です。最近,よく本を借りて読むようになりました。これまでは,「本は買うもの」だと思っていたのですが,保管場所がなくなってしまったんです。

 微生物がつくり出す天然の有機化合物の研究で,ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村先生の伝記です。
 大村先生が,農家の生まれで,一度定時制高校の先生となり…という経歴から,紆余曲折を経て研究者となったことが伝わってきて,なかなか興味深いものがあります。次はどんな出会いがあって,どういう道を選ぶのだろう,と,一気に読んでしまいました。
 ただ-本書は,こ本人から聞き取ったりしたことをまとめたものらしいのですが-ちょっと教訓的すぎて,読んでいて疲れてきました。
 本書帯にあるように「至誠天に通ず」くらいならいいのですが,至る所で教訓話というか,大村自身を動かしてきたという〈言葉〉が出てきます。
 たとえば,祖母からの「人のためにやることを考えてやりなさい」
 たとえば,母からの「教師たる資格は,自分自身が進歩していることである」(これは母の日記を覗いて知ったようです)
 たとえば,山梨大学の地学教授からの「社会に出てから5年間頑張れ」
 たとえば,中国の古語「万変に処するに一敬を主とす」
 まだまだ出てきます。

 これは,同じくノーベル賞を受賞した小林先生が講演の折りに,会場の参加者から「座右の銘は?」と聞かれて,「そういうのを持たない,そういうのに囚われないことが,科学的な態度であり,研究を深めていくのだと思います」と堪えたこととは対照的です。

 北里研究所の建て直しや,新たな病院の建設など,経営的な手腕があることもはじめて知りました。また,美術への造詣も深かったという大村は,新しく作った病院の廊下を絵で飾ったり,ついには,美術館まで作ったりします。
 人間的には,とても幅の広い,おもしろそうな人だなあと思いました。

 フィラリア症で愛犬を亡くしたこと(ずいぶん前の犬ですが…その頃はクスリを飲むことさえ知らなかった時代)のある私にとっても,今,元気な犬と散歩できる楽しさをかみしめています。大村先生たちの研究があったからこそですからね。

 本書の原本となった『大村智 2億人を病魔から救った化学者』は,ノーベル賞受賞前に出版された物らしく,しかも詳しいということなので,こちらの方も読んでみたいです。
 

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