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小川洋著『空見上げて』

 『たのしい授業』(仮説社)誌上で連載されていた『「新人育成教員」日記』が単行本になって登場。老若問わず,すべての教師に読んでもらいたい本です。

 著者の小川は,定年退職後,再任用で小学校現場につとめている教師である。仕事は,「新人育成教員」という「新しく先生になった人を一人前にするための副担任」という仕事。新人側にしてみれば,ありがたいのか,迷惑なのか,わかんないような立場の仕事だ。
 さて,その小川は,新人さんが〈要求していること〉に対して,あるいは〈今求めているだろうと思われること〉に対して,実に,タイミングよく,関わり,アドバイスをしている。これだと,新人さんも,安心して授業に取り組んだり,子どものことを理解したりできるであろう。まさに「啐啄の機」である。
 本書に,新人育成教員たちが集まったときの話も出てくるが,そこでは,「新人への愚痴花盛り」といった感もあったそうだ。でも,小川は,新人さんの愚痴なんていわない。我慢して言わないのではなく,言う必要がないのだ。
 このことを裏がえして言うと,新人ばかりの集まりでは,おそらく「育成教員への愚痴ばかり」となっているではないか。そして,小川が担当している新人さんは,「俺って,なんていい人に巡り会ったのだろう」と思っているのに違いない。
 小川の子どもや新人さんへの指導の〈優しさ〉〈的確さ〉は,彼が現役時代ずっと取り組んできた仮説実験授業をはじめとするたのしい授業や子ども中心の考え方が根底にあって、醸し出されてくるものだ。
 本書のことは,月刊誌『教育・2016年4月号』掲載の子安潤の論文にも取りあげられている。以下引用して,本書の紹介を終わろう。
「かかわりすぎないようにしつつ,子どもにも新任教師にも小さな達成感を積み重ねていく。その〈ゆるさ〉は新任教師への優れたガイドであるだけでなく,スタンダードへのやわらかい向き合い方を示唆している。」(p.34 子安潤著「授業のスタンダード化に向き合う」『教育・2016年4月号』かもがわ出版)

 私の現場にも若い人たちが多くなってきた。
 小川のように,若者たちとは,余り関わりすぎず,しかし,小さな達成感が感じられるような,そんな人間関係を作っていきたいものだと思う。

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コメント

イワナ釣り師さま
コメントありがとうございます。

コメント欄は,基本,OKにしていないので,許可するのをわすれちゃうんです。

山女魚の生態についても,今回,勉強になりました。子どもたちも,楽しんでみてくれていました。

投稿: 珠洲たの管理人 | 2016年4月24日 (日) 08:12

わたしも買って読みました。いい本ですね。

コメント欄がほとんど書き込みできないのでここに書かせてもらいます。
ヤマメの放流をされたとのこと。いいですね。わたしはイワナの産卵場造成に関わっているので,うれしくなる記事でした。石川など北陸には釣りに行ったことがないので一度は行ってみたいと思っているこのごろです。
大村さんの本は積読状態になっています。そろそろ読んでみようかという気になりました。

投稿: jwaイワナ釣り師 | 2016年4月23日 (土) 09:48

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