« 馬場のぼる著『11ぴきのねこ ふくろのなか』 | トップページ | 寺田寅彦著『災害と人間-地震・津波・台風・火災の科学と教育』 »

ドリアン助川著『あん』

 本書のことは,1月のサークルで知った。
 そのサークルの時の話題は,同じ著者が書いた別の本の紹介からだったが,こんな本も書いているという話になり,内容は,ハンセン病を扱っているということだった。
 ハンセン病については,私も,相当調べたことがあったので,興味が沸いて読んでみた。
 ここに出ている,「柊に囲まれた療養施設」や「ハンセン病資料館」というのは,多間全生園のことに違いない。私は,数年前に,一人でここを訪れ,園内をまわったことがある。とても静かな佇まいのであったが,やはり,柊の生垣に囲まれているようすは,異様でもあった。本書を読みながら,その時のことを思い出していた。
 その時の簡単な資料は,ここに書いたので,興味のある人は読んで見てください。

 本書は,桜の咲く季節からはじまり,桜の咲く季節で終わっている。柊という漢字は,木偏に「冬」と書くが,小説の中で,その両側を桜で囲むことに,なにかメッセージがあるのかも知れない…と思った。
 この物語は,映画化もされており,元ハンセン病患者の老婆を樹木希林が演じているらしい。もうすぐ,DVDも発売されると言うことなので,是非見て見たいものだ。

 ある中年男がお店を任されているどら焼店に,指の関節の曲がった老婆がやってくる。その老婆が作るあんは,とてもおいしくて,お店は繁盛し始める…が…その老婆は,かつてある病気を患っていたことが,うわさとして流れ…。
 以下はネタバレです。

 本書は,元ハンセン病患者を扱っていて,それだけで興味深いのだが,この小説の舞台は,患者が隔離されていた昔ではなく,現代である。らい予防法が廃止されてて久しいのだが,世の中の目は,けっして元ハンセン業患者にはやさしくはない。そんな中で,生きる喜びを見いだしていった老婆の姿に,中年男は,勇気づけられるのだった。そして老婆もまた,前歴者である中年男と関わったことで,生きる喜びを見いだしていく。
 脇役の中学生の女の子も,いい味出している。
 読後にはさわやかな風が…とまではいかない。なにせ扱っているテーマが重いから。それでも,人間,みんな生きていていいんだよって気持ちになることはまちがいない。

|

« 馬場のぼる著『11ぴきのねこ ふくろのなか』 | トップページ | 寺田寅彦著『災害と人間-地震・津波・台風・火災の科学と教育』 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/105430/63106000

この記事へのトラックバック一覧です: ドリアン助川著『あん』:

« 馬場のぼる著『11ぴきのねこ ふくろのなか』 | トップページ | 寺田寅彦著『災害と人間-地震・津波・台風・火災の科学と教育』 »