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林純次著『残念な教員』

 教育現場が,今,どのように大変な状況なのかも分かっていて,この本が出ている…というか,だからこそ,本書が読まれているのかも知れないと思う。現場の教師が書いた,現場教師暴露本である。
 確かに,本書に書かれていることの殆どは,本当の事だと思う。部活しか考えない教員もいるし,優等生として育ってきているので,耐性の弱そうな教員もいる。できない子を「その子」のせいにしてる教員もいるように思う。
 だが,しかし…,国家や社会から,教員に求められている様々なことについて(しかも,それは10年余りでコロコロ変わるノダ…ゆとり,支援,学力向上,生きる力…),一教員がしっかり受け止めて,価値あるように反応するのは,今の現場の状況では,不可能に近いと思う。こう言ってしまうと,わたしも「残念な教員」の仲間入りとなるのだろうか。
 教員を批判するのは簡単だが,「ではどうするばいいのか」の対案を示さないと,単なるバッシングで終わるだけだ。
 その点,本書にも,少しは,「こうすればいいよ」という指導法も紹介されている。とくに,新任教員は,もっと先行事例を研究したほうがいい。なんでもオリジナルを求めたがる今の新任指導は,時間ばかりかかって(結果,被害を蒙るのは子どもたち),あまり得るものがない。教育ほど先輩教師の文化遺産を大切にしない現場はないのではないか…という指摘には,うなづける。わたしたちは,自分の授業を考える時に,もっともっと昔の人の指導例を学習する必要がある。
 ともあれ,ここまで書かれると,今,現場にいる一般的な教員は,みんな「残念な教員」だということになりそうで,なんだか,この結論が,残念だ。
 読後,なんとなく違和感があった。それは,著者の言うとおりのことをやろうとすると,たぶん,いろんなところ(家庭で,地域で…)で,無理や不和や不信が生まれてくるのではないかということだ。
「子育てをしたり,恋もしたり,お寺の掃除もしたり,地域のお祭の世話人もしたり……という人間的な生活をしながら教員も続けていける…そんな職場の創造を目指していく」という取り組みも同時に行わないと,いけないと思うのだ。
 今の小学校でさえ,帰宅するのは午後8時を過ぎている人が多くいる。朝は5時頃に来ている若者もいる。土日も学校に来ている人も多い(部活はないのだが…)。こんな現状の教師に対して「残念だ」「プロじゃない」と言ったって,次は,病気になるだけじゃないかとも思う。
 教師が楽しく学ぶための対案を出すと同時に,教師がもっとはたらきやすくするための現場づくりの対案も示して,行政にも働きかけるべきだ。
 今の現場では,著者がいうプロ教師は育ちようがない。「オレができているんだから,お前たちもやれ」では,ついてくる人はいないだろうなあ。

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