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原田実著『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』

 道徳の副読本にまで取り上げられるようになった「江戸しぐさ」。以前から,なんとなくうさんくさいなあとは思っていました。
 本書は,巷間言われている「江戸しぐさ」が,実は,数名の人間のでっち上げでしかないことを,徹底的に究明した本です。
 だいたい,あの有名な「傘」の話は,江戸の庶民が普通に傘をさしていないと起きないことなのですが,当時,傘は高級品でしかなかったんですって。また,「時泥棒」の話に至っては,当時,庶民が厳密に時刻を知るすべなどなかったのに,そんなことはそもそも無理…だったのではないか。
 ま,こういうふうに「江戸しぐさ」であげられていることと,江戸時代に本当にあった事実とを一つ一つと比べることも大切ですが,本書では,もっと根本からも,そのオカルトぶりをつっこんで話を展開しています。
 「江戸しぐさ」を言いだしたのが,芝三光(しばみつあきら)という人です。この人は,江戸にあったこういう庶民の文化を明治政府が滅ぼしたと本気で思っているようで,その復活を夢見ていたのでした。この人が言い出した「江戸」は,本物の江戸ではなく,こうあればいいなあという「芝の江戸」だったのです。その事実を知ってか知らずか,もう一人の立役者(聞き取りした人=後継者?)の越川禮子が広めていった…。
 江戸時代が,「江戸しぐさ」に現れているように,人に優しく平等な世界だったのなら,部落差別などなかったのではないか…という,著者の巻末の指摘も説得力があります。
 人を都合のいいようにもって行こうとする経営者や為政者たちが,至る所でからんでいるのも気持ち悪い。
 すでに学校現場に,史実ではない「江戸しぐさ」がはいってしまっていることは,とても残念です。
 以前,TOSSが,「水からの伝言」を授業化していたこともありました。それは自己批判してネットからはなくなりました。が,今また,「江戸しぐさ」の学校現場への導入には,TOSSが大きくからんでいます。
 とにかく,教師なら,本書をしっかり読んでから,授業をするかどうか決めて欲しいです。
 知らなかったとは言えないです。

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