浅井リョウ著『武道館』(文藝春秋)

文藝春秋
発売日 : 2015-04-24
 浅井リョウがアイドルを扱うと,こんな感じになるんだなあ~というのが,読後の第1印象。
 大地と愛子という幼なじみの設定が,一貫して物語の縦の線を貫いている。
 アイドルグループが武道館を目指して成長する物語…といいたいところだが,そこは,もちろん,「よかったね! ちゃんちゃん!」では終わらないリョウの世界がある。人の成長とは何か,アイドルを売るとは何か,夢とは何か,いろんなことを考えさせられる物語でした。

 この社会では,他人の欠点をあげつらって不幸を願う悲しい人々のなんと多いことか。もっとみんなが人の幸せを願うことを目指して欲しいと思う。だれかが何かをやらかすのを待って,バッシングする社会は,ただただ窮屈なだけ。
 人が成長していくというのは,自分で,そのときどきの生き方を選択していくということ。どんな選択であっても,それは「シメタ」と思えたほうがよい。

 以下は,文章からの引用文です。

「愛子は,その全員の選択に,テストで正解を出したときみたいに,赤いマルをつけたかった。やりたいこと,夢,今自分がいる環境,現実。すべては両立しない。だから人は選択をする。ならば,その選択にどうにかしてマルをつけたかった。」(P.260)

 そう,どんな選択もマルなんです。心からそう思えるだけで,どれだけ気が楽になることか。「こんな選択でよかったのか」となやむよりも,「次にどう選択するか」と考える方がよほどいいです。

 この物語のエンディングは,心温まりました。

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北國新聞社出版局編『宗玄の挑戦~能登杜氏を生んだ250年酒蔵』

 地酒「宗玄(そうげん)」の現在の社長がまとめた,「今の宗玄会社」の本といえばいいかな。
 ま,地元の本屋で見つけ,自分がいつも飲んでいる宗玄のことだから買って読んでみたのだが,ん~,こういうことを書き残す意味ってどこまであるんだろうか? 現在の会社の紹介のようなものになっていて,ちょっと期待外れ。
 今の社長になってから,いろいろと改革をしたらしいことが書かれていて,その改革に対して,古くからの社員からはなかなか理解が得られないこともあったという。それでも,改革を断行してきた。というような話だ。
 ただ,一消費者とすれば,今の様な,いろんな名前のお酒が出てくると,何がどうなのか分からなくなってしまってくる。「大吟醸」にも数種類あるし…。
 あまりにも戦略的に進めることの危険性はないのか心配にもなる。

 わたしとしては,もっともっと宗玄の歴史の部分を掘り起こして欲しかったなあ。

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藤岡換太郎著『フォッサマグナ』

 久しぶりにネットではなく,本屋さんで出会った本。そして久しぶりに手に取ったBLUE BACKSです。
 「そういえば,フォッサマグナについてはしっかり調べたことがなかったなあ」「この本は読みやすそうだな」と思い購入。予想どおり,とても興味深く,ミステリアスで,謎解きのような本でした。
 フォッサマグナがどのように出来たのかについて,まだ定説がないことにビックリ。それでも,藤岡さんは,他のさまざまな事実を総合しながら,自分の仮説を提出してくれています。
 糸魚川静岡構造線の境目には私も行ったことがあります。地層の様子が明らかに違っていてなかなか興奮する場所でした。近くの駐車場には枕状溶岩の露頭も見れます。もう一度,行ってみたくなったな。
 本書は,フォッサマグナといいながらも,結局は,日本列島はどのようにして出来たのかがちゃんと書かれていて,そういう意味でも,日本列島の誕生を知る入門書となっています。
 いやー,地学っておもしろいわ。

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池上彰著『わかりやすさの罠』

 分かりやすい説明で有名な著者が書いた「わかりやすさの罠」というお話。ちょっと興味が沸いてくる書名…そんなわけで読んでみた。
 著者は,分かりやすく演説して(そしてまんまと成功した)政治家として,トランプや小泉純一郎をあげている。この二人に共通するのは,言い切った言葉(アメリカファースト,郵政民営化)により,主権者に「他にいろいろと考えなくてもよい」と思わせるところだ。でもこういう言葉にまどわされて大きく世論が動いた結果,その先に待っていたものってなんだったのだろう。郵政民営化後の日本はどのように変わったのか? 何かプラスになったのか。よく分からない。トランプになってから,世界の進むべき方向が変になってきたし…。
 「分かったつもり」になることへの対策もいくつかあげてくれている。それは,複数の新聞を読むことであったり,リアルな書店に出向くことであったりするのだが,ま,アドバイスに真新しいことはあまりない。
 それでも,最近,SNSに書きこんだり,Amazonばかり利用しているわたしにとっては,ちょっと警鐘を鳴らしてくれる本だった。実際,本書も,たまたま寄ったリアル本屋さんで手に取った1冊だしな。
 やっぱり,リアル本屋に行くのは大切だよ~。
 そして,SNSに書きこむよりも,となりの人に説明する方がよほど「よく分かる」に繋がるんだよ。
 そういいながら,わたしはSNSに書きこむのであった。

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厚さ2センチくらいの板に「文化十?年」の文字が

190430 今日,土蔵の掃除をしていた。奥の方の,これまで触ったことのない場所のショーケースを捨てようとどかしたら,その下から分厚い木の板が出てきた。いらんはこれ,捨てよう…と思って,蔵の外に出したら,木には何やら文字が書かれている。
 ほとんど読めないのだが,最初は「文化十?年」と読める。文化と言えば,江戸時代。1804年~1818年までの元号だそうだ。ということは1814年~1818年の頃の板ということだ。あとの字,読める人はいませんか?

 

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浅井リョウ著『世界地図の下書き』

 児童養護施設の子どもたちを描いた作品。あまり小説を読む方じゃないので,こういうタイプの内容は初めてだ。
 小学校から高校生まで,さまざまな子が出てくるが,その子たちは,当然,いろんな〈もの〉を抱えているからこそ,ここに,いる。その〈もの〉は一人一人違うから,施設の中の子どもたち同士でさえ,うやらましがったり,見せびらかしたり,秘密にしたり…と,お互いに心を開くことはなかなかできない。
 しかし,そんな子どもたちが,今年高校を卒業して施設を離れてしまう佐緒里(佐緒里は進学を諦めて親戚の家に働きに行くことになってしまった)を勇気づけようと,協力して〈あること〉をしかけようと計画するが…。

以下,ネタバレ注意!

 ラストのシーンは,とってもよかった。浅井さんだから,また何かどんでん返しでもあるのかと心配してたけど,そうでもなかった。
 佐緒里に思いを寄せる(たぶん初恋だな)6年生の太輔の気持ちが,これまた,とてもいい。
 最後の5ページくらいで,浅井さんからのメッセージが伝わってきて,「ここがいやならにげていい」「別にガマンしなくていい」「この先にも,また分かってくれる人が絶体いる」と励まされる。

 「私たちは,絶体にまた,わたしたちみたいな人に出会える」
 「逃げた先にも,同じだけの希望はあるはずだもん」
 こんな佐緒里の言葉に胸を熱くするわたしであった。
 

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青木優和文・畑中富美子絵『われから』

 「われから」と聞いて,「あ~あれのことか」と理解できる人はどれくらいいるのだろうか? わたしは,初めて聞く言葉だった。
 「われから」…それは,「かいそうのもりにすむちいさないきもの」の名前だ。なんともヘンテコな形をしている。日本の海で見つかりやすい21種類のワレカラが,表紙裏にイラストで紹介されている。「ワレカラモドキ」だけど,ちゃんとワレカラの名前だったりして,おもしろい。
 絵本で見るのは初めてだけど,今まで,見たことがあるような気がする。千切れて浮いているホンダワラなんかを取ってきて,砂浜に穴を掘って水を入れて遊んでいたときに,見たことがあるような。
 今年の夏は,目的意識的にみて見ることにしよう。ただ,絵本は持っていけないので,個体の方をビニル袋にでも入れてくるかな。
 産まれたばかりのワレカラをワレカラが乗せて歩いている姿は,是非見て見たい。
 さすが仮説社,おもしろい絵本を出すよ。学校の図書館にもお置いてもらおっと。

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かわさきしゅんいち絵・文『うみがめぐり』

 お世話になっている仮説社から,ついに絵本まで出ました。さすが,科学関係の書籍を扱っているとあって,内容は「科学」です。
 ウミガメの赤ちゃんの一生の話かなと思っていたら,そうではありませんでした。
 いのちはつながりあっている…そんな話でした。ということは,やっぱりウミガメの赤ちゃんの一生の話でもあるのでしょうね。
 どのページの絵も迫力があって,見応え十分。そして,オノマトペもおもしろい。これぞ,絵本ならでは…です。

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杉原里美著『掃除で心は磨けるのか』

 自問清掃をしている学校に勤務していたことがある。初年度は「自問清掃を自問する」などという資料を職場に配付して,疑問を呈していたが,なにしろ町を挙げて行っているので,学校独自でなかなかやめられない。静かに清掃をしていることで心が磨けるのかといえば,NOである。その学校の子どもたちは,他の学校の子よりも素晴らしいというよりも,その逆だったから。

 本書は,そんな枝葉末節なことについて書かれているわけではない。
 静かに掃除をすることも,朝ごはんを食べることも,ちゃんと宿題をすることも,親を大切にすることも,郷土愛を持つことも,全部,大切なことなのだ。だれも反対できない。が,しかし,そういうことを「国がシモジモに指示するように言ってきたらどうなるのか」…それを問題視する。
 最近,学校で起きている〈ちょっと違和感のあること〉の根底を見ると,見事につながってくる。根底にある,戦前回帰の流れ=日本会議の存在。
 〈子どもたちの自己実現を目指す〉という視点よりも,〈これからの社会を維持していくための人材〉としてしか見ていない国家の教育観。新自由主義史観の行く末が垣間見えるようで恐ろしい。
 今,現場は大変疲れている。物が言えない教師が増えている。主体性のない教師に垂れ流しのように指導される子どもたち。どんな大人になっていくのだろう。
 著者は「あとがき」で次のようにいう。

「国家」「公共」「社会」ありきで,その枠に適応する人材育成のための教育が支配的になっていくと,こうした枠組みそのものの問題点を指摘できる「人材」は育ってこない。/自分の頭で考えて,ものを言う人たちがいなくなれば,戦前の日本のように,いつの間にか国民全体が同じ方向に流されてしまうかもしれない。/本書が,立ち止まって考えるきっかけになればと願う。

 ぜひ,読んで見て下さい。いろんなものがつながっていることが分かります。そして,こちらは,バラバラにされていることも…。

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《もしも原子が見えたなら》の一場面

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 10万個の空気の粒の中には,どんな分子が見えるかな。
 「ネオンを探せ!」「ヘリウムを探せ!」と夢中になる子どもたち。
 ネオンやヘリウムは,10万個の空気の分子の中に,1~2こしかないそうです。

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